さがしもの

日々思ったことを書いていきます。

闖入者

おはようございます。

ほそやんです。

 

ノーベル賞の発表も終わりましたが

今年は日本人受賞者がなく静かでしたね。

ネタ半分で村上春樹が今年こそって騒がれてますが、

かつて本当に受賞間違いなしって言われた

日本人の作家がいました。

安部公房です。

残念ながら受賞前に他界されてしまいました。

 

カフカ系って言えばわかりやすいですが、

読んでいて頭がおかしくなりそうな話ばかりです。

長い話のやつはたぶん今の僕にはついていけないので

頭の柔らかい若い時にこそ読むべき本だと思います。

長編はしんどいので、

短編で強烈に印象に残っているお話を紹介します。

 

水中都市・デンドロカカリヤ (新潮文庫)

水中都市・デンドロカカリヤ (新潮文庫)

 

1973年の本なのでもう50年前の本です。

今の若い人にとっては

漱石とか鴎外と同じくくりかもしれませんね・・・ 

この本の中に「闖入者」というお話があります。

 

尼崎監禁事件や北九州監禁事件って

こんなこと有り得はずがないって思うような

事件ですがこの短編小説を読めば

有り得るんだって思えてしまえるお話です。

ja.wikipedia.org

ja.wikipedia.org

 

おおよそのストーリーはこんな感じです。

 

普通の一人暮らしをしていたサラリーマンの家に、

ある日突然見知らぬ祖母夫婦子供一家が押し寄せて来て

家を占領されてしまいます。

 

出ていけという主人公に対して、

闖入者たちは「民主的に多数決で決めよう」と提案します。

民主主義といえばなんでも正義だと思い込んでいる人たちに

形ばかりじゃ欠陥だよ、と作者があざ笑ってみせます。

形だけの民主主義によって打ち負かされた主人公は今度は

近隣や警察に助けを求めるものの誰も助けてくれません。

事なかれ主義や地域社会の人間関係の希薄化を示し、

最後はルールの悪意解釈を示してくれます。

 

主人公は突然現れた一家に対して、

物質的、肉体的、精神的に順次制圧されていき

最終的に死を選ぶ様に私は戦慄しました。

むしろ、死を選ぶことができたことに安堵すらしてしまいます。

 

そんな馬鹿なことあるかって思いますが、

現に尼崎や北九州で起こってます。

 

ぼくたちが間違いなく正しいと思っていることの

不確かさを目の前に突きつけられて、

ぼくはこの本を初めて読んだ時に

震えるほどの恐怖を感じました。

 

理不尽に対するあっけないほどの弱さ、

自己防衛することの大切さ、

短い話ですが色んなことを考えさせられるお話です。

この話って、人としてだけではなく、

もっと大きく家族単位にしても、

もっと大きく国家単位にしても当てはまるし、

反対にもっと小さく肉体的、経済的、精神的に

限定しても当てはまります。

 

30分もあれば読めます。

立ち読みでもいいので読んでみるべきお話だと思います。

もしこの「闖入者」が面白いって思えたのならば

安部公房の「箱男」も読んでみてください。

もっと面白いと思います。

 

じゃ、また!!

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