さがしもの

日々思ったことを書いていきます。

人それぞれの理想形のしのぎあい

おはようございます。

ほそやんです。

 

先日に読んでる途中ですって書いていた

漫画「ジパング」読み終わりました。

 ネタバレがありますので

ネタバレは嫌だって人は

ここで立ち止まって、

読み終わってから帰ってきてください。

だいぶ時間かかると思いますが・・・ 

 

大きく言えばタイムスリップものです。

現代のイージス艦一隻が太平洋戦争中の1942年の

ミッドウェー海戦直前に突然タイムスリップをします。

前半は歴史が変わることへの恐れが描かれ

後半は様々な人の戦後日本の理想像のせめぎ合い

がリアルに描かれます。

 

主人公は二人。

一人は現代人であるイージス艦の副長角松二佐。

行動は現実主義、思考は理想主義。

ジパング(21)

もう一人は日本帝国海軍草加参謀。

行動は理想主義、思考は現実主義。

ジパング(23)

 

自衛隊らしい専守防衛と日米ともに人を殺さないことを

最優先に考えるあまりかえって苦境に立つ角松二佐と

できることは原爆製造と使用もまったくためらわない反面

リスクの高いことばかり画策する草加参謀。

 

海上で死にかかっていた草加参謀を命がけで助けた角松二佐。

彼は戦中の人間として屈辱的な戦後日本の歴史を知ってしまった

草加参謀の暴走を止めるのは自分しかいないと思い反発しつつも、

お互いに「日本」を思う気持ちは同じであるという点で

信頼関係、もう一歩踏み込めば友情が芽生え葛藤します。

 

ミッドウェー海戦以前の「日本」に関しては誰にとっても一つですが

それ以降の「日本」に関しては主要人物によってまちまちです。

角松二佐が思う日本は戦争に負けたものの復興を果たした現代日本であり

草加参謀が思う日本はアメリカと対等講和する負けなかった日本であり

米内大将が思う日本は戦争に負けて軍国主義の過ちに気づく日本であり

東条総理が思う日本は戦争に勝ってさらに領土拡大していく日本であり

石原中将が思う日本は満州国を通じてアジア圏内で大きくなる日本。

主人公二人の思う「日本」の熱量にあてられて

様々な人が思う「日本」や歴史そのものが動いていきます。

 

この中で草加参謀が思い描いた「日本」を彼が「ジパング」と

呼んでいたことがタイトルになっています。

それぞれの人にとって理想の戦後日本を実現するために尽力し

それに協力しようとする優秀でまじめな

現場の人間同士の戦いと葛藤がさらに物語を深めていきます。

 

さらに当時の技術からするとわけのわからない性能を持ちながら

専守防衛というわけのわからない行動をする

イージス艦に戸惑うアメリカ側の描写も秀逸です。

そこも注目しながら読んでいくと面白いです。 

 

草加参謀はイージス艦で得た現代の知識をもとに原爆を製造し

これを使用することでアメリカ側と講和することを目論見ます。

角松二佐は原爆を使用した汚名を日本と草加参謀に着せないために

これを阻止しようと必死に行動をします。

 

この二人のどっちが「みらい」を見越しているのでしょう?

目先の死者を減らすことを考えている角松二佐?

戦争を有利に終わらせることを考えている草加参謀?

終わらせた後の汚名を考えている角松二佐?

こういう一概にどっちが正しいとは言えないことが頻発する

戦争状態の不条理さ、無常さが考えさせられる要因となります。

 

本当にたくさんの人が死にます、この本。

やりきれないぐらい人が死にます。

最終話でちゃんと報われる形でまとまりますが

これは実際に読んでみて納得してください。

タイムスリップによる歴史改変ものとして

きれいな終わり方だと思います。

 

ここからはぼくの解釈なので

間違っていたらごめんなさい。

草加参謀はつねに香典の時に使う

薄墨みたいな薄い色で描かれます。

黒々と描かれる角松二佐と対比させるかのように。

・・・まるで実在しない人間かのように。

 

草加参謀というのは存在する人ではなく

角松二佐が現代のルールや常識に縛られて

できないことを実現するための思念が

結晶化したものではないかと思います。

そう考えると幽霊のような話とみるか

角松二佐の夢物語とみるかは人ぞれぞれですが

また違ったみえ方がするのではないかと思います。

 

最終話で戦後の様子が描かれますがそこで

草加参謀の意思を継いだ人物(滝中佐)が

黒々と描かれているのに対して

白髪頭になって薄い色で描かれる

やるべきことが終わった角松二佐の対比にも

大きな意味が込められているように思います。

 

よかったら一度読んでみてください。

中国が暴走しかかっている今だからこそ

読む価値はあると思います。

コミックサイトでも読めます。

じゃ、また!!

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